一瞬、ドアの開け方が分からなくて戸惑う。埋め込み式のノブなのだ。扉は折り戸になっている。
冷めないうちに、とりめし弁当で夕飯にする。大館駅は駅弁の「鶏めし」が有名だが、ワタシの目の前のこれはコンビニの350円のやつである。とは言っても、これはこれでおいしい。小さい弁当なので足りないかなとも思ったが、直前にピザまんを食べていたこともあり、これで充分だった。
「あけぼの」のソロは起きあがっていると圧迫感があるので、食べ終わってすぐに寝ころぶ。明日の朝には立派な秋田牛になっているかもしれない。
灯りを消して寝ころんでいると、空が見える。
次第に暗さに目が慣れてくると、星が出ているのが分かるようになった。
さらにじっと見ていると、かなりの数の星が見えることに気がつく。
満天とは言わないけれど、確実に4等星までは見えている。
列車は八郎潟付近を走っている。ワタシの15号室は八郎潟の方を向いている部屋なので、空を遮るものはない。遠くに丘の稜線が時々見えるくらいだ。
カシオペアを見つけた。
これを皮切りに、北極星の位置が分かればあとは大体の星座は分かる。
列車が向きを変えるたび、クリスマス・クロスになったはくちょう座、ペガススの四辺形などが窓の外を彩ってくれた。きっと、反対側の部屋からは華やかな冬の星座が見えるのだろうが、こちらもなかなかだ。
五能線ではムードに欠けて聞く気になれなかった山崎まさよしをかけてみる。寝台車に寝ころんで星を見上げながら聞く山崎まさよしは、心にしみた。
八郎潟を抜けると、遠くに光る塔が見えた。あとで調べたところによると、秋田港のセリオンというタワーらしい。これが見えると、まもなく秋田。
部屋の外でお客2人と車掌の声がする。どうやら部屋を間違えている人がいるようだ。この辺の人は声が大きいのか、それとも防音性がないだけなのか、廊下の声がすべて聞こえる。
「あけぼの」は羽越〜信越〜上越〜高崎線まわりで上野を目指す。
もともとは奥羽本線で福島回りだったのが、山形新幹線開通で陸羽東線小牛田回りになり、後に「鳥海」と統合される形で現行ルートになったという歴史を持つ列車だ。
ワタシは現行ルートになってから、酒田〜大宮間でこの「あけぼの」のソロを利用したことがある。
なので、酒田までは起きていようと思った。
秋田発車後も飽きずに星を眺めている…微妙におやじギャグ。
こんなに星を見たのは群馬県立ぐんま天文台に行ったとき以来かな。あのときの景色も素晴らしかった。
象潟付近で海沿いを走るようになる。水平線近くに漁船の漁り火が見える。しかし、空には雲が出てきてしまった。
酒田では地面が濡れていた。少し雨が降ったらしい。とにかく目標の酒田には着いた。さて、寝ようか。
ぐんま天文台への旅や、酒田の旅の記憶に包まれながら眠りについた。
目が覚めたのはすでに埼玉県に入った行田付近だった。天気は雨。秋田で降られなくてよかった。
見慣れた大宮を過ぎて、上野駅は13番線の到着だった。13番線は行き止まりの櫛形ホーム。長距離列車の終点にふさわしい形をしている。
ずっと単機で牽引してきたEF81の赤いボディを「ごくろうさん」とポンと叩いて、この旅の区切りとした。
秋田編 おわり


